「うちの子、すぐにあきらめちゃうんです」
「失敗すると、もうやりたくないってなってしまって……」
「友だちとけんかしたあと、気持ちを切り替えるのが難しくて」
こんな相談を受けることがあります。
そんなとき、私たちはつい、
「もう少し頑張ってみよう」
「最後までやってみよう」
「気持ちを切り替えよう」
と声をかけたくなります。
もちろん、その言葉が子どもの背中を押すこともあります。
でも、非認知能力を育てるという視点で考えると、
「頑張って」と言うだけでは、なかなかうまくいかないこともあります。
なぜなら、
「頑張る」
「我慢する」
「切り替える」
といった言葉は、子どもにとって少し抽象的だからです💧
そこで大切になるのが、
子どもが実際の生活の中で、少しずつ力を使えるようにしていくことです。
いきなり大きな成長を目指す必要はありません。
「昨日よりちょっとできた」
「先生に言われる前にできた」
「失敗したけど、もう一回やってみた」
そんな小さな変化を積み重ねていくことが大切✨
今回は以下の文献を参考に、
特別支援教育や学校心理の視点から、
非認知能力を育てるための5つのステップを紹介します。
【参考文献】
非認知能力とは?
非認知能力という言葉を聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
簡単にいうと、
テストの点数のように数値では表しにくい、
「自分とうまく付き合う力」や
「人とうまく関わる力」のことです。
たとえば、
「失敗しても、もう一度やってみる」
「気持ちが高ぶったときに落ち着く」
「相手の話を聞く」
「自分から行動する」
「困ったときに助けを求める」
「目標に向かって取り組む」
といった力が、非認知能力に含まれます。
学校生活を思い浮かべると、こうした力が活躍する場面はたくさんあります。
授業で難しい問題に出会ったとき。
友だちと意見が合わなかったとき。
失敗して恥ずかしくなったとき。
「やりたくないな」と思う活動に取り組むとき。
つまり、非認知能力は、
毎日の生活のあちこちで使われている力なのです。
ただし、ここで大切なのは、
「非認知能力が高い子はすごい」
という見方をしすぎないことです。
子どもによって、得意なことも苦手なことも違います。
その日の疲れ具合や気持ちによって、できることが変わることもあります。
だからこそ、
「この子は意欲がない」
「この子は我慢ができない」
と決めつけるのではなく、
「どんな環境なら、この子は力を発揮しやすいんだろう?」
と考えてみることが大切です。
非認知能力は、もともとの性格だけで決まるものではありません。
日々の経験や周囲の関わり方の中で、少しずつ育っていく力でもあります🍀
ステップ1:チャンクダウン
抽象的な目標⇨具体的な行動目標へ
最初にやってみたいのが、「チャンクダウン」です。
ちょっと難しそうな言葉ですが、意味はシンプルです。
大きな目標を、小さな行動に分けていくことです。
たとえば、「自分から行動できるようになってほしい」という目標があったとします。
大切な目標ではありますが、子どもからすると、
「自分から行動するって、何をすればいいの?」
となるかもしれません。
そこで、
「ゴミが落ちていたら拾って捨てる。」
「考えても分からない問題があったら、質問する。」
など、具体的な行動に変えてみます。
「最後まで頑張る」という目標なら、
「難しい問題に出会っても、まず30秒考えてみる」
「それでも分からなかったら、質問する」
といった形にできます。
すると、子どもにとっても、
「これならできそう」
と思いやすくなります。
そして先生にとっても、
「できたかな?」
と、子どもの姿を具体的に見取りやすくなります。
大きな目標を、今日できる小さな行動に変える。
これだけでも、子どもの取り組みやすさは大きく変わります。
「頑張ろう」ではなく、
「まず、ここまでやってみよう」
と具体的に伝えることが大切ですね✨
ステップ2:フィードバック
子どもの見取り〜直接的な意識づけを
次に大切なのが、日々の「声かけ」です。
でも、ただ単に
「ほめる」
「叱る」では もったいないです(>_<)
大切なのは、
子どもの行動と、その結果をつなげて伝えること
たとえば、子どもが難しい問題に取り組んでいたとします。
「えらいね!」
だけでも、もちろんうれしいでしょう。
でも、
「分からなくても、すぐにあきらめずに教科書を見たね」
と伝えてみると、もっと具体的になります。
「あ、この行動がよかったんだ」
と、子ども自身が気づきやすくなるからです。
これが、ポジティブフィードバックです。
一方で、うまくいかなかったときもあります。
たとえば、難しい課題の途中で席を立ってしまったとします。
そんなとき、
「どうして座っていられないの!」
と責めるより、
「難しくなったところで、席を立ったんだね」
と、まず事実を伝えてみます。
そのうえで、
「次はどうしたらよさそうかな?」
と、一緒に次の方法を考えます。
ネガティブフィードバックというと、「ダメだったことを指摘する」という印象がありますが、そうではありません。
「今のやり方ではうまくいかなかったよ」
と、次につながる情報を返すことです。
そして、できたときには、その瞬間を逃さずに言葉にします。
「今、自分で気持ちを切り替えられたね」
「困ったときに、ちゃんと助けを求められたね」
こうした積み重ねが、子どもにとっての
「自分って、こうすればいいんだ」
という気づきになります。
先生の「見つける力」が、子どもの「気づく力」を育てていくのです。
ステップ3:ギミックの3要素
ここからは、少し視点を変えてみます👀
ステップ2のように、言葉で直接伝える方法だけではなく、
自然とそうした行動が生まれるような仕掛けをつくってみます。
それが「ギミック」です。
たとえば、
「ちょっとやってみたい」
「なんだか楽しそう」
「どうなるんだろう?」
と思えるような仕掛けを、授業や教室の中に入れていくイメージです。
3つの要素について紹介します!
ねらい・意図
まず考えたいのは、
「この仕掛けで、どんな非認知能力を育てたいの?」
ということです。
たとえば、「みんな仲良くしてほしい」という思いがあるとします。
そこで、ただ「仲良くしましょう」と伝えるのではなく、
「友だちの話を最後まで聞く力を育てたい」
「自分の役割を最後までやりきる力を育てたい」
「困ったときに助けを求める力を育てたい」
など、ねらいを少し具体的にしてみます。
すると、どんな活動や環境にすればよいのかが見えてきます。
ギミックは、ただ楽しいだけの仕掛けではありません。
「こんな力を使ってほしい」
という、小さな意図が入っていることが大切です✨
空間ギミック・教具ギミック・活動ギミック
3種類のギミックを紹介します。
空間ギミック
机の配置を少し変えるだけでも、子どもの行動は変わります。
友だちと自然に顔を見て話せる配置にする。
落ち着いて考えたい子のためのスペースをつくる。
必要なものがすぐに見つかるようにする。
こうした「環境の工夫」も立派なギミックです。
教具ギミック
・タイマー
・チェックカード
・手順カード
・役割カード
・選択カード
などを使うことで、「次に何をすればいいか」が誰にとっても分かりやすくなります。
活動ギミック
「今日は先生からのミッションです」
「みんなで○○を達成しよう」
など、子どもが思わず参加したくなるような活動に変えてみます。
「勉強しなさい」と言われるより、
「この謎を解けるかな?」
と言われたほうが、ちょっと前のめりになる子もいます。
そんな小さな違いをつくっていくのです。
感情の動き
そして、ギミックを考えるときに忘れたくないのが、
子どもたちの感情の動きです。
「やらなきゃ」ではなく、
「ちょっとやってみたい」
「おもしろそう」
「続きが気になる」
と思えると、子どもは自然と動き出します。
たとえば、いつもの課題を「先生からの挑戦状」にしてみる。
掃除を「チームでミッションをクリアしよう」にしてみる。
発表活動に「今日のベストコメントを探そう」という仕掛けを入れてみる。
こうした工夫だけで、子どもの表情が変わることがあります。
もちろん、派手な仕掛けである必要はありません。
「やってみようかな」と心が少し動くこと。
そこが、とても大切です。
ステップ4:アセスメント
振り返り⇨メタ認知
せっかく活動をしても、「楽しかった」で終わってしまうのは少しもったいないですよね。
そこで大切になるのが、振り返りです。
「できた」「できなかった」だけではなく、
「どんなときにできた?」
「何があるとうまくいった?」
「逆に、どんなときに難しかった?」
と、子どもの姿を見ていきます。
たとえば、
「今日は最後までできたね」
で終えるのではなく、
「どうして今日は最後までできたと思う?」
と聞いてみます。
すると、
「最初にやることを決めたから」
「タイマーがあったから」
「友だちが教えてくれたから」
と、子ども自身が気づくことがあります。
これは、とても大切な学びです。
子どもが、
「自分は、こうするとできるんだ」
と分かるからです。
これが、メタ認知につながっていきます。
「自分はどう考えたのか」
「何をすると、うまくいくのか」
を知ることで、別の場面でもその方法を使えるようになります。
だからこそ、評価したいのは「できた」という結果だけではありません。
「どうやってできたの?」を一緒に見つけていくことが、とても大切なのです。
ステップ5:リフレクション
指導者自身の振り返り
そして、最後に忘れてはいけないのが、私たち指導者自身の振り返りです。
子どもの様子を見ていると、
「もっと頑張ってほしい」
「もう少し落ち着いてほしい」
と思うことがありますよね。
でも、そんなときこそ、少し立ち止まってみます。
「本当に子どもだけの問題なのかな?」
と考えてみるのです。
たとえば、課題が難しすぎたのかもしれません。
説明が長すぎたのかもしれません。
次に何をするのか分からなかったのかもしれません。
教室の環境が、子どもにとって使いにくかったのかもしれません。
そう考えると、
「この子ができない」
という見方から、
「どうすれば、この子ができるようになるだろう?」
という見方に変わっていきます。
リフレクションは
「自分の指導が悪かった」
と落ち込むためのものではありません。
「次は、ここを少し変えてみよう」
と考えるための時間です。
子どもを変えようとするだけではなく、
大人の関わり方も少しずつ変えていく。
その積み重ねが、よりよい支援につながっていきます。
さいごに
非認知能力は、特別な授業をしないと育たないものではありません。
朝の会にも
授業にも
休み時間にも
給食にも
掃除にも
友だちとのやりとりにも
たくさんの「育つチャンス」があります。
そして、何より大切なのは、
「この子には何が足りないんだろう?」ではなく
「この子が力を発揮できる条件は何だろう?」と考えてみることです。
大きな目標を、小さな行動に分けてみる。
子どもの小さな変化を見つけて、言葉にする。
環境や教具、活動を少し工夫してみる。
「やってみたい」と思える仕掛けをつくる。
活動のあとに、一緒に振り返ってみる。
そして、私たち自身も「どうだったかな?」と振り返る。
こうした小さな積み重ねが、子どもたちの非認知能力を少しずつ育てていきます。
非認知能力を育てることは、子どもに「もっと頑張らせること」ではありません。
むしろ、
「やってみようかな」
「これならできるかも」
「もう一回やってみたい」
と思える環境を、一緒につくっていくことなのだと思います。
昨日はできなかったことが、今日は少しできた。
今日はできなかったけれど、やってみようとした。
そんな小さな一歩を、私たち大人が見つけてあげる。
そんな小さな積み重ねの先に、子どもたちの
「自分でやってみよう」という力
が育っていくと信じています✨
【参考文献】


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