「マルトリートメント」
という言葉を聞くと、虐待のような、とても深刻なことを想像するかもしれません。
でも実は、マルトリートメントには、子育ての中で誰もがついしてしまうような、日常的な関わり方が含まれることがあります。
「早くしなさい!」
「どうしてできないの?」
「お兄ちゃんはできるのに」
そんな言葉を、忙しい毎日の中で口にしてしまうことはないでしょうか。
もちろん、親だって人間です。
疲れている日もあれば、心に余裕がない日もあります。
大切なのは、「絶対に怒らない」「一度も失敗しない」という完璧な子育てを目指すことではありません。
「あれ、ちょっと言いすぎたかな」と気づいたときに、少しずつ関わり方を見直していくこと。
今回は、以下の文献を参考に
子どもの心と脳を守るという視点から、
身近にあるマルトリートメントについて一緒に考えていきましょう💪
【参考文献】
マルトリートメントとは?
マルトリートメントとは、子どもに対する「不適切な養育」を指す言葉です。
暴力やネグレクトだけではなく、子どもの心を傷つけるような言葉や態度、過度なコントロールなども含まれます。
たとえば、
- 「なんでこんなこともできないの?」
- 「そんなことで泣かないの」
- 「お姉ちゃんはちゃんとできるのに」
- 「あなたのために言っているの」
- 子どもが話しているのに、いつも話を途中で遮る
- 失敗したことを何度も責める
- 怒鳴ったり、怖がらせたりすることが繰り返される
このような関わりが、一度あったからといって、すぐに「悪い親」ということではありません。
子育てをしていれば、感情的になってしまうことは誰にでもあります。
大切なのは、強い叱責や否定、無視などが繰り返されていないかということです。
そしてもう一つ、覚えておきたいことがあります。
それは、マルトリートメントについて知ることは、「親を責めるため」ではないということです。
「もしかしたら、今の関わり方を少し変えられるかもしれない」。
そう気づくためのきっかけとして、この言葉を知っておくことに意味があります。
子どもの脳に影響を与える、親の言動とは?
子どもの脳は、成長の途中にあります。
特に幼い時期は、身近な大人との関わりの中で、「人を信じること」「気持ちを落ち着けること」「困ったときに助けを求めること」などを少しずつ学んでいきます。
そのため、強いストレスを長く感じる状態が続くと、子どもの心身に負担がかかることがあります。
ここで大切なのは、暴力や暴言だけが問題になるわけではないということです。
たとえば、子どもが何か話したそうにしているのに、いつも「あとでね」と後回しにされる。
失敗すると、「また失敗したの?」とため息をつかれる。
何をしても「ダメ」「遅い」「どうせ無理」と否定される。
家の中で怒鳴り声や威圧的な態度が頻繁に続く。
こうした経験が積み重なると、子どもは「ここは安心できる場所なのかな」と不安を感じることがあります。
そして、親の表情や声色を必要以上に気にするようになる子もいます。
「今、話しかけても大丈夫かな」
「怒っていないかな」
「失敗したらどうしよう」
と、いつも大人の機嫌をうかがうようになるのです。
ただし、子どもの行動には、発達特性や学校生活、友人関係、睡眠、体調など、さまざまな要因が関係しています。
そのため、「この行動があるからマルトリートメントだ」と単純に判断することはできません。
むしろ大切なのは、「困った行動」と見る前に、「何か困っていることがあるのかな」と考えてみることです。
「どうしてこんなことをするの?」
と考える代わりに、
「何かつらいことがあったのかな?」
と考えてみる。
そんな視点が、子どものSOSに気づくきっかけになることがあります。
子どものSOSサインとは?
子どもは、大人のように「つらいです」「助けてください」と、いつも言葉で伝えられるわけではありません。
その代わりに、行動や身体の変化としてSOSを出すことがあります。
もちろん、ここで紹介する様子が一つ見られたからといって、すぐに問題があるとは限りません。
大切なのは、**「これまでと比べて変わったか」「その状態が続いているか」**という視点です。
幼児期の気になるふるまい
幼児期は、もともと感情を上手にコントロールすることが難しい時期です。
そのため、かんしゃくや甘えがあること自体は、決して珍しいことではありません。
ただ、以前と比べて急に変化したときには、少し気にかけてみましょう。
- 急に甘えが強くなる
- 以前できていたことをしなくなる
- かんしゃくが増える
- 大人の顔色をとても気にする
- 一人になることを強く嫌がる
- 指しゃぶりなどが急に増える
- 睡眠や食事のリズムが大きく変わる
「わがままなのかな」と思う前に、
「最近、何か心配なことがあるのかな?」
と、少し立ち止まって考えてみることも大切です。
児童期の気になるふるまい
小学生になると、子どものSOSは少し違った形で表れることがあります。
たとえば、
- 学校に行きたがらなくなる
- 朝になると頭痛や腹痛を訴える
- 急に勉強を嫌がる
- 学力が急に低下する
- 落ち着きがなくなる
- 友達とのトラブルが増える
- イライラしやすくなる
- 学校では頑張るが、家で荒れることが増える
- 「自分なんてダメ」と言うことが増える
特に、「学校ではとてもいい子なのに、家では大きく荒れる」という場合があります。
これは、学校で一生懸命頑張っているぶん、安心できる家庭で気持ちがあふれている可能性もあります。
また、
「前はできていた勉強が急に難しくなった」
「授業中に落ち着かなくなった」
といった変化も、単なる「怠け」や「やる気の問題」と決めつけないことが大切です。
「どうしてできなくなったの?」
と責めるよりも、
「最近、何か大変なことがある?」
と声をかけてみる。
それだけでも、子どもが安心して話し始めるきっかけになることがあります。
思春期の気になるふるまい
思春期になると、親との距離を少しずつ取りたくなるのは自然なことです。
口数が減ったり、親への反発が強くなったりすることもあります。
ですから、「反抗する=問題」というわけではありません。
一方で、以前とは明らかに違う変化が続いている場合には、少し丁寧に様子を見てあげたいところです。
- ほとんど部屋から出なくなる
- 学校を長く休むようになる
- 睡眠のリズムが大きく崩れる
- 食事量が極端に変化する
- 不安が強くなる
- 気分が落ち込む、何をしても楽しくないなどの抑うつ症状が見られる
- 自分を強く否定する
- 以前好きだったことをしなくなる
- 家族との会話を極端に避ける
思春期の子どもは、つらい気持ちを親に話すことが難しい場合があります。
そんなときには、
「どうしたの?」
と何度も聞くより、
「最近ちょっと疲れているように見えるけど、大丈夫かな?」
と、変化をそっと伝えてみるほうが話しやすいこともあります。
そして、子どもが話し始めたら、すぐに答えを出そうとしなくても大丈夫です。
まずは、
「そうだったんだね」
「それはしんどかったね」
と、気持ちを受け止めてあげる。
「話しても大丈夫なんだ」と感じられることが、子どもの安心につながっていきます。
子育てでは「完璧」より「修復」が大切
ここまで読んで、
「私も子どもに強く言ってしまうことがある」
「言ってはいけないことを言ってしまった」
と、心配になった方もいるかもしれません。
でも、どうか自分を責めすぎないでください。
子育てで大切なのは、一度も失敗しないことではありません。
むしろ、失敗したあとにどうやって関係を修復していくかが大切です。
怒りすぎてしまったら、
「さっきは言いすぎたね。ごめんね」
と伝えてみる。
話を聞けなかったら、
「今ならちゃんと聞けるよ」
と伝えてみる。
子どもの気持ちを否定してしまったら、
「本当はそう感じていたんだね」
と、もう一度受け止めてみる。
親が謝ることは、親としての立場が弱くなることではありません。
むしろ、「人は失敗しても、もう一度やり直せる」ということを子どもに伝える機会にもなると考えています。
最後に
「マルトリートメント」という言葉を知ると、
「うちの子育ては大丈夫かな」
と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事で一番お伝えしたいのは、親を責めることではありません。
子育てはとても大変です💧
毎日、子どものことを考えて頑張っているからこそ、疲れてしまうこともあります。
私も、イライラする日はあります💢
つい強い言葉を使ってしまうこともあります💦
そんなときは、
「私はダメな親だ」ではなく、「次は少し変えてみよう」
と考えてみてください。
子育てに100点満点はありません。
完璧な親になる必要もありません。
大切なのは、子どもが、
「ここにいていい」
「困ったら助けてもらえる」
「失敗しても大丈夫」
と思える場所を、一緒につくっていくことだと思います。
そして、子どもの様子が長く気になるときや、家庭だけでは抱えきれないと感じるときには、一人で頑張らなくても大丈夫です。
学校
幼稚園・保育園
スクールカウンセラー
地域の相談窓口
医療機関
など、頼れる場所はたくさんあります。
子育ての悩み、一人で抱え込まないで。
誰かに相談することは、決して恥じることではありません。
親も子どもも、少し楽になるための大切な一歩です。
「ちゃんと育てなければ」と一人で抱えるのではなく、
「一緒に考えてくれる人を探そう」
「ちょっと聞いてもらいたい」
「一回、相談だけしてみようか」
その気持ちから始めることも、
子どもの心と脳を守る子育てなのだと思います。
この記事が、
毎日、子育てに奮闘されている方々にとって
少しでも参考になれば幸いです✨
最後までお読みいただきありがとうございました🍀
【参考文献】


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