学校現場(特別支援学校・小中学校)では、多動的な行動を示す子どもたちに出会うことがあります。
「落ち着きのなさ」=注意欠如多動症(ADHD)
と考えられがちですが、注意欠如多動症(ADHD)の他にも考えられる要因として、
・自閉スペクトラム症(ASD)
・愛着障害(AD)
といった発達的・心理的な問題が隠れている場合があります。
同じ行動でも、背景要因によって、適切な手立て・支援は異なります。
的確なアセスメントを通して、効果的な支援をすることが大切です🍀
今回は以下の文献を参考に、
「落ち着きのなさ」にある背景要因
適切な手立てや支援ついて一緒に学んでいきましょう💪
【参考文献】
1. 注意欠如多動症(ADHD)
注意欠如多動症(ADHD)は、行動面の課題です。
多動な実態の背景要因がADHDの場合、どんな場面でも多動なことが多いです💦
学齢期の子どもに見られる発達障害の一つで、
・注意の持続が難しい
・衝動的な行動が多い
・多動的である
といった特徴があります。
ADHDの子どもたちは、落ち着いて座っていられず、授業中に席を立ったり、話の途中で口を挟んだりすることが頻繁です。
脳内の神経伝達物質であるドーパミンとノルアドレナリンの不均衡が考えられています。これにより、集中力の低下や衝動性が高まり、多動的な行動が引き起こされることが多いです。遺伝的要因も強いとされています。
〈適切な手立て・支援〉
- 環境の整備: 授業中に集中しやすい環境を作り、余計な刺激を減らす工夫を行います。
- タスクの分割: 長時間の作業や複雑な指示を、短時間のステップに分割して提供します。
- ポジティブな行動の強化: 良い行動が見られた際に即座に褒め、適切な行動を強化します。
- 自己管理スキルの指導: タイムマネジメントやストレスコントロールの技術を教えます。
- 医療的介入: 必要に応じて、専門医による診断と行動療法や薬物療法を検討します。
2. 自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、認知面の課題です。
多動な実態の背景要因がASDの場合、いつも多動というわけではなく「居心地」がよければ落ち着いて過ごせます。
一方、刺激が多かったり、やりたいことが最後までできなかったり、何をするべきか分からなかったりすると多動な行動が見られます💦
社会的なコミュニケーションや対人関係に困難を抱える発達障害です。
ASDの子どもたちは、
・特定の興味や行動に強いこだわりを持つ
・他者との相互作用が難しいことが多い
・感覚過敏や低登録の場合がある
ASDにおける多動的な行動は、感覚過敏や感覚探求行動として現れることがあります。
脳の構造的および機能的な違いが関与しています。特に、社会的認知に関連する脳領域の神経回路の特性がASDの症状を引き起こすと考えられています。また、遺伝的要因や環境的要因も影響を与えます。
〈適切な手立て・支援〉
- 視覚支援の活用: 日常の流れや指示を視覚的に提示することで、予測可能性を高めます。
- コミュニケーション支援: 絵カードやジェスチャーなどを用いた代替コミュニケーション手段を提供します。
- 感覚統合療法: 感覚過敏や感覚探求行動に対処するための療法を取り入れます。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST): 社会的ルールや対人スキルを学ぶ機会を提供します。
- 構造化: 日常生活のルーチンを固定し、不安を軽減します。
3. 愛着障害(AD)
愛着障害(AD)は、感情面の課題です。
多動的な言動が「いつも」生じるわけではありません。
・ネガティブな感情が充満している
・ポジティブな感情が有り余っている
などの興奮状態で多動になります。
一方、程よいポジティブ感情の時は、落ちついて過ごせるため、多動に「ムラ」があるのが特徴です。
自分の感情を受け入れられた経験が乏しく、適切な感情の表出に課題がある場合が多いです。(多動・暴言・暴力・身体接触などが見られる)
心理的・身体的虐待やネグレクト、頻繁な養育者の交代、母親の産後うつや父母関係の不安定さなどにより、幼少期に安定した愛着が形成されなかった結果、
他者との信頼関係や感情調整が困難になる状態になります。
愛着の課題を持つ子どもたちは、他者との関係において過剰な依存や拒絶反応を示し、多動的な行動をとることがあります。
〈適切な手立て・支援〉
- 信頼関係の構築: 継続的かつ一貫した対応を通じて、安定した関係を築きます。
- 感情調整スキルの指導: 子どもが自身の感情を認識できるように、養育者が言語化するなど適切に表現する方法を教えます。
- ポジティブなアタッチメントの促進: 養育者や教師が一貫して愛情深い態度を示すことで、安全感を提供します。
- トラウマインフォームドケア: トラウマに対する理解とケアを専門的に行います。(心理士によるセラピーやカウンセリングなど)
- 安定した環境の提供: 学校や家庭での安定した環境を維持し、安心感を高めます。
まとめ
多動的な行動は、単なる「わがまま」や「しつけの問題」として捉えられることが多いですが、その背後には複雑な発達的・心理的な要因が存在します。ADHD、ASD、ADのいずれにおいても、多動的な行動の要因は異なり、それぞれに応じた適切な支援が必要です。
また、「背景要因が何か一つの発達障害が原因」なのではなく
「困難を合わせ有する」場合の方が多いです。
〈例〉
自閉症(ASD )の特性に加えて、マルトリートメントによる愛着障害(AD)もある場合。
愛着の課題がある場合は、愛着面への支援から始めると良いと思われます。
学校現場や家庭で多動的な行動が見られる子どもたちに対しては、その背後にある要因をアセスメントし、個別のニーズに応じたサポートを行うことで、安心して学び、成長できる環境を整えることが重要です。
学校だけ、家庭だけではなく、保護者、専門家が連携して取り組むことが、子どもたちにとっても、支援者にとってもより良い未来への近道だと考えています💪
次回は、愛着に問題のある子への「通常学級でもできる手立て・支援」について紹介します。
【参考文献】
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