認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)は、
精神的健康を改善するための効果的な心理療法の一つです。
この療法は、思考(認知)と行動が相互に関連している
という考えに基づいています。
具体的には、ネガティブな思考パターンが不適応な行動を引き起こし、それがさらなるネガティブな感情や思考を引き起こすという悪循環を断ち切ることを目指します。
〈例〉
「上司に叱られた」
↓
「自分は何をやってもダメだ」
↓
「自分なんて誰にも必要とされていない」
このような、認知の歪みによって、心にダメージを抱えてしまうことがあります。
そんな認知の歪みを調整して、行動を変容させていこうとするのが認知行動療法です。
今回は、書籍を参考に認知行動療法の概要について解説していきます。
【参考文献】
認知行動療法の歴史と発展
認知行動療法は、1960年代から1970年代にかけてアーロン・ベック(Aaron Beck)とアルバート・エリス(Albert Ellis)によって開発されました。ベックは、うつ病患者の治療中に、患者のネガティブな思考パターンが症状を悪化させていることに気付きました。
一方、エリスは合理的情動行動療法(Rational Emotive Behavior Therapy: REBT)を提唱し、非合理的な思考が情動的な問題を引き起こすと考えました。これらの理論を基盤に、CBTは多くの精神疾患の治療に応用されるようになりました。
認知行動療法の実践方法
認知行動療法は、患者が自身の思考パターンや行動を認識し、修正するのを助けるための具体的な技法を用います。以下に代表的な技法をいくつか紹介します。
認知再構成
患者がネガティブな自動思考(automatic thoughts)を特定し、それらの思考が現実的かどうかを検証します。
例えば、「私は失敗するに違いない」という思考が非現実的であることを理解し、「成功する可能性もある」と考え直すように促します。
自動思考での推論の誤りとして、以下の10項目が挙げられます
自動思考がストレスの原因になっていないか一緒に見直してみましょう
① 0ー100思考
完全な成功以外は失敗と考えてしまう思考
〈例〉
「テストで1問間違えてしまった」
↓
「自分は頭が悪いんだ」
② 過度の一般化
一つの否定的な出来事を全てに当てはめる
〈例〉
「プレゼンで『わかりにくい』と言われた」
↓
「自分にはこの仕事は向いていない」
③ 心のフィルター
否定的なことにとらわれ
良いことに目を向けられない
〈例〉
「上司から取引先との言葉選びについて指摘を受けた」
↓
「自分は何一つ上手くやれない。上司にも迷惑ばかりかけている。」
④ マイナス化思考
プラスの出来事を軽視、拒絶
〈例〉
「先輩に笑顔について褒められた」
↓
「他に褒めるところがないからだろう」
⑤ 結論の飛躍
人の心を勝手に読んだり、事態を先読みする
〈例〉
「夫が残業続きで帰りが遅い」
↓
「私のことはもうどうでもいいんだ。」
「他に好きな人ができたのかもしれない。」
⑥ 拡大解釈・過小評価
マイナス面を過大に、プラス面を過小に捉える
〈例〉
「算数テストは100点だが、国語は85点だった」
↓
「勉強したのにダメだった。こんな点数しか取れない。」
⑦ 感情的決め付け
感情こそが事実の根拠だと決め付ける
〈例〉
「子どもの世話に毎日追われてイライラしている」
↓
「愛情よりイライラが大きいなんて、親失格だ。」
⑧ すべき思考
非現実的な高い基準を自分や他者に課してしまう
〈例〉
「自分が組んだプログラムが想定通りに動かなかった」
↓
「何をやっているんだ。プログラムのミスなんて絶対に許されない。」
⑨ レッテル貼り
自分や他者を、極端なステレオタイプで評価する
〈例〉
「友達は就職の内定を得たのに、僕はどこにも決まっていない。」
↓
「自分はダメ人間。落ちこぼれだ。」
⑩ 個人化
他の人に起きたことを自分のせいだと思い込む
〈例〉
「クラスの子が突然転校して、挨拶もできなかった。」
↓
「自分との友達関係に悩んでいたのかもしれない。気づけなかった私のせいだ。」
このような自動思考(脳のクセ)
を認識して修正する練習を積み重ねることが大切です💪
行動活性化
特にうつ病患者に有効な技法で、患者が楽しい活動や達成感を感じられる活動に積極的に取り組むことで、気分の改善を図ります。
「何をするきも起こらない」と一日ダラダラと過ごしてしまうと
さらに鬱々とした気分になってしまうことがあります
心が疲れている時にこそ予定を入れて行動することで気分が改善することがあります
自分がどんなことをしている時に気分が良いか
を分析し、予定の中にその行動を組み込むことで
心が安らぐ時間を作り出すことが大切ですね。
露出療法
不安障害の治療に用いられる技法で、患者が回避している恐怖の対象や状況に徐々に曝されることで、不安を減少させます。
あえて、不安に感じている行動を短時間でも行っていき、
「大丈夫だった」
という経験を積み重ねることで、不安を減少させていくことを目指します。
マインドフルネス
現在の瞬間に集中し、過去や未来への不安から解放されることで、ストレスや不安を軽減します。
人間は、常に未来を予測して考えて行動しています。
社会的生活を送るうえて、必要不可欠な能力ですが
ずっとグルグルと思考が脳内を駆け巡ることで
ネガティブな感情が湧き起こり
気分が落ち込むことがあります
1日に数分でも良いので、過去や未来のことは一切考えず
今この瞬間の自分の体の様子に目をむけます。
頭に浮かんだ思考も否定せずに受け入れ、
今の心と体が感じていることに集中することで
体や心の力を脱力させることでストレスを軽減する方法です。
私も、お風呂や寝る前のストレッチをしながら毎日行っています💪
認知行動療法の効果と適用範囲
認知行動療法は、
・うつ病
・不安障害
・PTSD
・強迫性障害(OCD)
・摂食障害
・双極性障害
・慢性痛
・不眠症 など、
さまざまな精神的および身体的健康問題に効果があります。多くの研究がその有効性を支持しており、短期間で効果が現れることが多いのも特徴です。
認知行動療法の利点と課題
利点
- エビデンスに基づく: 数多くの臨床研究でその有効性が証明されている。
- 短期間で効果が期待できる: 多くの患者が数週間から数ヶ月で改善を感じる。
- 自己管理能力の向上: 患者が自身の思考や行動を管理するスキルを習得できる。
課題
- 専門的なトレーニングが必要: 効果的なCBTを提供するには、治療者が専門的な訓練を受ける必要がある。
- 一部の患者には適さないことがある: 例えば、重度の認知障害を持つ患者には効果が限定的な場合がある。
まとめ
認知行動療法は、多くの精神疾患に対して有効な治療法であり、エビデンスに基づいた実践が行われています。
患者が自身の思考と行動を見直し、より健康的なパターンを身につけることで、精神的健康の向上が期待できます。
比較的短期間で効果を発揮することが多く、患者の自己管理能力を高めるための強力なツールとなります。
専門的な訓練が必要である点や、すべての患者に適用できるわけではない点などの課題もありますが、認知行動療法は現代の心理療法において重要な位置を占める治療法です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました✨
いつも、記事を読んでくださり本当にありがとうございます。
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少しでも『認知行動療法』について興味を深めていただき、自分やお子さんの将来の職業や生き方について、少しでも参考になれば嬉しいです🌈
今後もできる限り有益な記事を書いていきますので、よろしくお願いします。
【参考文献】
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