通常の学級で行う『愛着障害』のサポート

おすすめ本

巡回相談員として、地域の学校へ訪問すると、気になる行動の背景に『愛着』の課題を抱えている子どもをよく見かけます。

『愛着』の課題とは、養育者との愛着が何らかの理由(虐待やマルトリートメント)で形成されないと、感情面に課題が生じるため、子どもの情緒や対人関係にも問題が生じる状態です。


この状態は、一見すると他の発達障害(ADHDやASDなど)に見られる行動と似ているため、専門家でも見分けが難しことがあります💦

ADHDやASDの特性がある子たちに有効だと考えられる支援・配慮をしても効果がない(逆効果)な場合、背景に愛着の課題がある可能性があります。

愛着の課題を抱える子の多くは、通常学級に在籍しています。個に応じた支援をしたくても限界があり、悩まれている担任の先生方も多いのが現状です…

そこで今回は、以下の文献を参考に、通常の学級で行う『愛着障害』のサポートについて一緒に学んでいきましょう💪

【参考文献】

『特別扱い』が許容されるクラスづくり

 愛着の課題を抱える子の多くは『特別扱いしてほしい』子たちです。
そのため、先生に構ってもらおうと抱きついたり、立ち歩いたり、教室を飛び出したり、暴言・暴力したりするような場合があります。

 その子にだけ優しくしていると、他の子から


「先生はなんで叱らないの?」
「エコひいきだ」


という声が挙がってくることもあるでしょう。そうなると、先生への不信感が募り、学級崩壊へと進む可能性もあります。

そうならないためには、先手の支援が大切です

学期はじめなどに『平等』と『公平』の違いについて、わかるように伝える必要があります。

子どもたちは、先生に
「みんな同じ課題」
「みんな同じ関わり」
を求めている場合が多いと感じます。

『みんな同じ』
は『平等』であっても『公平』ではない
ことを伝えましょう

〈例〉
先生「好きな果物は?」
子A「りんご」
子B「みかん」
子C「ぶどう」
子D「もも」
先生「りんごが好きな人が一番多いから、みんなにりんごをあげましょう」

見た目は、『みんな同じ』で『平等』にりんごがもらえるのですが、
「りんご」以外が好きな子たちにとっては、納得いかないでしょう。

子Aには「りんご」を
子Bには「みかん」を
子Cには「ぶどう」を
子Dには「もも」を
というように『別々のもの』を提供するのが、『公平』だと伝えます。

子どもへの指導・声かけでも
その子の課題にあった「指導・支援」は異なります

ある子に「座りましょう」という声かけは有効でも
ある子にとっては、逆効果な場合があります。

叱ることが有効な子には叱るが
有効ではない(逆効果)な子には叱らない支援が大切だ

これを、大人だけでなく、周囲の子どもたちも受け入れられている学級は、誰かを『特別扱い』していても、納得して受け入れてくれます。

『特別扱い』は『公平』を担保するためであり、
一人ひとりに応じた『特別扱い』をすることが、特別支援教育だと考えています。

先生の言うことをしっかり聞いている子たちにも、
『先生はしっかり見ているよ』
と言うシグナルを、アイコンタクトやささやきなどの『特別扱い』をすることも大切ですね🍀


『先手』の支援

【叱る】は基本的に、『後手』の支援です
先ほどのクラスづくりは『先手』の支援の一つです

愛着に課題がある子の多くは、

「褒めて認めてほしいからこれをしよう」
「叱られるからやめておこう」

という思考回路・感情が形成されていない場合があります。

そのため、叱る・褒める関わりだけでは、効果は小さいです。

『先手の支援』=『みんなに認めてもらえる行動へ誘導すること』

立ち歩いている子に、「これ配って」
寝転がっている子に、「(その子の興味のある話題で)これについて教えて」
など、結果的に、不適切な行動から、周囲に認められる行動へ誘導し、「認められた」という経験を積むことが大切🍀


『キーパーソン』の設定

いつでも
誰でも
適切な関係性支援で
愛着の絆は修復が可能です

愛着障害は、誰かがその絆となる特定の人になれば、治すことができます♡

ここで気をつけたいのが、子どもの要求に応えることが、愛情ではありません。
要求に応えると要求がどんどん大きくなる『エスカレート現象』になってしまいます…

愛情とは、
与える側の大人から見たものではなく
受け取る側の子どもが、愛情を感じているかどうか

必要な支援を成功させるための条件について解説します❤️

愛着対象となる特定の人の候補者(キーパーソン)を決定する

教育現場において、キーパーソンとなり得るのは、学級担任だけでなく、養護教諭や教育相談担当、特別支援教育コーディネーターが挙げられます。

キーパーソンから始まり、キーパーソンに終わる連携体制を作る

キーパーソン以外の人は、キーパーソンの許可なく、関わらないことが大切です。キーパーソンを頂点にした支援体制を組まないと、愛着障害の子は自分が関わりたい人に刹那的に関わりだけを求めてしまい、その結果誰とも愛着の絆ができなくなってしまいます。

『先手の支援』をする

前に紹介したような『先手の支援』を繰り返し、キーパーソンが先手で関わり、主導権を握って安心に繋げることが必要です。
子どもの要求に応えたり、行動を見てから褒めたり叱ったり無視したりする『後手の支援』は、愛着に課題のあるこの場合、うまくかないことが多いです。

子どもに主導権があると、うまくいきません。『叱る』ことが、『注目』という報酬になり、行動がエスカレートしたり、不適切な行動を無視して行動がエスカレートしたりなど、逆効果なこともあります😅

キーパーソンが『先手の支援』で主導権を握る

『感情のラベリング』の支援をする

愛着に課題のある子は、感情が適切に育っていないことが多いです。
そのため、子どもに「どう感じた?」「相手はどう思う?」などの声かけでは、自分の感情を言葉にできません

キーパーソンが主導権を握り、
「一緒に〇〇できて楽しいね」
「〇〇できなくて、悲しいね。悔しいね。」
「〇〇楽しみだね。」

など、感情をラベリングすることで、
「この気持ちは、そうやって表現するのか」
と子どもが自分の感情を言語化する手助けをすることが大切です。

自分の感情を言語化(ラベリング)できると、負の感情にも適切に対処することができるようになっていく


まとめ

「気になる行動」の背景には
生来的な発達の特性だけではなく
愛着の課題がある可能性
もあります。

目の前の子たちの実態を丁寧に観察し
発達特性だけでは説明できない行動が見られるのなら
まずは、愛着への支援から
行う
ことが大切です。

発達の特性は脳の特性であり、根本的に変わることはありません
一方、愛着の課題は関わり方によって、改善することができます

一筋縄ではいかないことがほとんどですか
どうか、一人で抱え込まず
学校全体や、地域全体の援助資源をフル活用して
子どもも、支援者もゆとりある関わりをできるようすることが重要だと感じています💪

【参考文献】

最後までお読みいただき、ありがとうございました✨
いつも、記事を読んでくださり本当にありがとうございます🍀
この記事を読まれた方が、
少しでも『愛着』について理解を深めていただき、少しでも参考になれば嬉しいです🌈
今後もできる限り有益な記事を書いていきますので、よろしくお願いします。

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