クラスに、いつも表情がとぼしく、休み時間も一人で過ごす子がいます。何か発達障害があるのでしょうか。教えてください。
はい。確かに何らかの発達障害がある可能性もありますが、愛着障害という可能性もあります。どちらに課題があるのかによって、今後の支援方法が変わってきます。
その一場面だけでは判断できないので、もっとよく観察する必要がありそうですね。
そうなんですね!愛着障害とはどんなものですか。
愛着障害とは『特定の人との情緒的・感情的な絆(安全基地・安心基地・探索行動)が形成されていない状態』のことをいいます。
なるほど。では、発達障害と愛着障害はどのようにして、見分けられるのでしょうか。
良い質問ですね!というわけで、今回は、発達障害・愛着障害を見分けるポイントについて解説していきます!
発達障害と愛着障害を見分けるポイント ①音の過敏性
例えば、このような行動が見られたとき、その背景にあるのは 何でしょう。
背景として考えられるのは、音に対する過敏性 ですね。しかし、その過敏性は
本人が生来もっている音に対する過敏性 かもしれないし
普段からよく怒鳴れたり、怒鳴りあっている大人を見ていたりするため、大きな音に恐怖を感じているのかもしれません。
後者の場合、関係機関とも連携した対応が必要になりますね。
このように、背景にある要因によって、支援者の対応が全然異なるため、丁寧な見取りが必要ですね。
発達障害と愛着障害を見分けるポイント ②多動の現れ方
多動=ADHD と決めつけてしまっては、効果的な支援ができない可能性があります。
見分けるポイント↓
一つの場面だけではなく、いろんな場面・時間で切り取って観察することで、どこに困り感があるのかが見えやすくなります。その困り感に応じた支援 を行うことが 不適応行動の改善に繋がります。
発達障害と愛着障害を見分けるポイント ③片付けが苦手
「片付けができない」ように見える現象
「ルールが守れない」ように見える現象
がなぜ起こっているか、突き止めることが 発達障害が原因の場合と、愛着障害が原因の場合を見分けるポイントです。
本当に片付けが苦手で、片付けられない → ADHDの特徴
片付けという一連の動作を最後までやり遂げる「実行機能」に弱さを抱える場合、衝動性や注意の問題で、他の行動が割り込み、最後まで片付けを遂行することができないことがあります。
片付けられるようにするには、
片付ける行動を細かい行動単位に分割
「まず、これだけして。できたね。」
「次は、これだけして。できたね。」
「最後はこれ。できた!片付けられたね!」
一方、愛着障害の場合、
「散らかっているより、片付けたほうが気持ちいい」という気持ち、感情そのものが育っていない可能性があります。
そのため、気持ちや感情を 育てていくことに重きをおく必要があります。
発達障害と愛着障害を見分けるポイントの整理
その他、いろいろな言動で見分けるポイントを紹介します。参考文献「愛着障害は何歳からでも必ず修復できる(米澤好史)合同出版」
『発達障害と愛着障害は併存する』
これまで、発達障害と愛着障害の見分けるポイントについて、解説してきましたが、注意していただきたいのは、『発達障害と愛着障害は併存する』ということです。
見える行動は 似通っていても 一人ひとり、背景にある要因は異なります。支援者として、その行動の背景にある要因をできるだけ正しくみとり、より適切・効果的な支援が行えるよう勉強していきたいですね。
例1 ADHD(注意欠如・多動症)と愛着障害(AD)を併せ有する子の特徴
気が散りやすい、不注意になりやすい、衝動的に行動してしまうなどという特性は、親にとって「叱らなければ」と受け止め、叱り過ぎてしまった結果、愛着をうまく形成することができず、二次障害として、攻撃性を抱えやすくなります。同じ失敗を繰り返しやすいので、何度も叱られ、自尊感情の低下にも陥りやすいです。
行動の問題としての多動性・衝動性が、さらに感情の問題として多動と重なって増幅され、非常に落ち着きがなくなってしまいます。
行動の問題 = ADHDの特徴 + 愛着障害の問題
例2 ASD(自閉スペクトラム症)と愛着障害(AD)を併せ有する子の特徴
他者の感情理解の難しさから、誰かと同じ気持ちであることに気付きにくくなります。自分の気持ちをわかってもらえたという安心基地や、ネガティブな感情のときに気づいてくれる安全基地が形成しにくくなります。その結果、愛着形成や感情発達の問題を抱えやすくなります。
行動の問題 = ASDの特徴 ❌ 愛着障害の問題
愛着障害・ASDの併存では、ADHDの場合と比べ、かけ算的に増幅される傾向があります。
ADHDやASDと愛着障害が併存している場合、ADHDの子への一般的な支援・医療、ASDの子への一般的な支援・医療では、改善されないことが多いです。
愛着の問題に目を向け、そこから改善していくことが必要だと考えます。
まとめ
発達障害と愛着障害。これらを適切に見とることが、支援者として求められます。
また、発達障害と愛着障害が併存する場合、どちらの支援に重きを置くかについては、様々な意見があるかと思いますが、私個人的には、愛着の問題の改善を優先するべきだと考えます。
その理由は、発達障害は環境を調整したり、投薬をしたりして、不適応行動を減少させることはできますが、特性自体をなくすことはできません。一方、愛着障害は、周囲の関わりによって修復できるからです。
支援者として、適切な見取り→ 適切効果的な支援・配慮
ができるよう、精進していきたいです。
もっと詳しく知りたい、学びたい方は、↓リンクより ぜひ手に取って お読みください。
次回は、愛着障害の修復のため、どのような支援が適切・不適切か、解説していこうと思います。
最後まで、お読みいただき ありがとうございました。
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